抜毛症とは
抜毛症とはトリコチロマニアとも呼ばれる、抑えきれない衝動により自らの毛髪を引き抜いてしまうものです。小学校から中学校までの学童期に発症することが多く、男女比では女性、特に思春期の女児に多くみられます。強迫症の一つと考えられ、現在、精神疾患を分類するDSM-5でも「強迫症および関連症(Obsessive-Compulsive
and Related Disorder : OCRD)に分類されています。
抜毛のタイプには抜毛するときの感覚を求める「焦点化型」と無意識で抜いてしまう「自動化型」があります。抜毛症では、毛髪が少なくなるほど毛を抜いてしまい、毛を抜く行為をやめようとしてやめられず、そのために強い苦痛を感じ、日常生活にも支障をきたしてしまいます。抜くのは毛髪にとどまらず、眉毛や睫毛を抜く場合もあります。抜いた毛髪を無意識になめたり飲み込んだりするお子さんも少なくなく、胃の中に毛玉を作り、食物の通過障害を起こすこともあります。
抜毛してしまう原因としては、家庭環境や学校生活、友人関係における問題、例えば周囲の期待に応えられないなどの不安がストレスとなり、発症することが多いと考えられており、ストレスを我慢し続け、それを和らげるひとつの手段として、抜毛してしまうというものです。
抜毛は無意識に行われる場合もあり、本人が認めないことも多くあります。お子さんが不自然に脱毛していたり、枕やブラシに髪の毛はあまり付着していないものの、勉強机の周辺などに抜け毛が落ちていたりといった場合は、抜毛症の可能性があります。
特に中学生・高校生以上になると、抜毛をやめられないことに罪悪感を感じたり、脱毛部を見せることへの抵抗から、ご本人が治したくとも病院受診をできない人が多いと言われています。抜毛が始まってから病院受診にいたるまでに、平均で10年以上かかる、という報告もあります。
毛症の治療としては、症状をコントロールするために薬物療法を行う場合があります。使用する薬剤としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬やクロミプラミンなどの抗うつ薬が有効なことが知られています。また、認知行動療法により、自分の行為を自覚して、引き金となる状況を特定し、衝動が起きたら抜毛とは別の行動、例えばこぶしを握り締める、何らかの作業をするなどに置き換えるようにすることで、抜毛を止めていくようにします。
前述のように、抜毛症は精神的ストレスを我慢し、それから逃避することが原因と考えられています。抜毛症の改善には、ストレスの原因となっている人間関係や問題となっている環境を理解することが重要です。お子さんの抜毛行為みかけても、むやみに叱らず、優しく注意するなど接していくことが大切です。ご心配なことがありましたら、お早めにご相談ください。