チックとは
「チック」とは下記に示すような特徴的な症状が、自分の意志とは関係なく突然現れるもので、複雑な音声チック及び運動チックが1年以上続くとトゥレット障害(トゥレット症)と診断されます。1年以上症状か続かない場合は、一過性チック症、1年以上続くが複雑でないものは持続性チック症と呼ばれます。
「運動チック」と「音声チック」は、緊張や不安、興奮、疲労などが誘因となりやすいと考えられています。癖とも思われがちですが、本人は苦痛を感じてしまうものです。
以下のような症状があります。
- 単純運動チック:
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- まばたきをする
- 肩をびくっとさせる
- 顔をしかめる
- 口をゆがめる
- うなずく
- 舌を突き出す
- 首を左右に振る など
- 複雑運動チック:
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- 飛び跳ねる
- キックする
- 倒れこむ
- 叩く
- 地団太を踏む など
- 単純音声チック:
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- 意味のない音声を発する
- 鼻や舌を鳴らす
- 咳払いをする
- 鼻をすする
- 叫ぶ
- 単語を繰り返す など
- 複雑音声チック:
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- 場にふさわしくない汚い言葉を発する(汚言)
- ほかの人が言った言葉を繰り返す(オウム返し) など
チックの原因としては、遺伝的要素、脳内の伝達物質の関与などが考えられており、3歳から6歳ごろに発症することが多く、9-12歳に症状のピークを迎えるとされています。男児に多い(男女比=4:1)ことがわかっています。
6歳頃までに瞬きや顔をしかめる単純運動チックが出現し、その後、単純音声チックが出現するというのが典型的な発症パターンです。チックは消失したり新しいチックが現れたりすることを繰り返しながら、10歳頃から複雑運動チックや複雑音声チックがみられるようになります。チックの症状は多くの場合、思春期、あるいは青年期・成人期までに改善しますが、大人になっても症状が残る方が一部いらっしゃいます。
チックの症状は特に明確なきっかけがなく、軽快と増悪を繰り返す経過をとります。その一方で睡眠不足や疲労、女性だと月経などの影響を受けることが知られています。
トゥレット症の治療では、チック症状が軽い場合は特に治療をせず、経過観察をしていきます。強く症状が出ている場合は、薬物療法を行うことがあります。またチックでは、注意欠陥・多動性障害や強迫性障害、さらに関連症状として、抜毛症などを合併したり、睡眠障害や衝動的な行動がみられる場合があり、その治療を並行して行うことも必要です。
チック症状が原因となり、学校生活などになじめないと、ストレスや疲労などで、さらにチックの症状が出やすくなるため、環境調整や療育により、本人や家族、教師など周囲の人がチックについて理解を深め、社会生活にうまく適応できるよう支援することで、いじめなどによる二次障害を引き起こさないようにすることが大切です。
薬物療法は、症状が重い場合に考慮されます。薬剤としては、向精神薬としてアリピプラゾールやハロペリドール、リスペリドン、グアンファシンなどがあります。ただし向精神薬は、児童・思春期方への使用に関しては、種類、用法・用量などを慎重に決定していく必要があります。向精神薬以外の選択肢としては、クロニジン(降圧剤)や漢方薬などもあります。
チックを減らすこと以上に、本人がやりたいことを諦めなくて済むように支援していきます。
豊富な診療経験に基づき、当院ではチックの治療も行っております。ぜひご相談ください。