身体表現障害について
身体表現性障害は、心身症とも呼ばれ、現在では身体症状症と呼ばれています。きちんとした検査をしても、身体的に何も異常がないにも関わらず、痛みや吐き気、しびれなどの身体的な症状が続くというものです。体に力が入らなくなる、けいれんする、といった症状が出る場合もあり、さらに症状は体のさまざまな場所に生じ、それが変化することもしばしばです。
小児科や内科・脳神経科で検査や診察を受けても、症状を説明しうる身体的な原因が見いだせません。また、そうした身体症状のために学校や仕事にも支障をきたしてしまう場合も多くなっています。
あらわれる症状としては、以下のようなものがあります。
- 身体化障害
- 痛みや胃腸症状などの様々な身体症状が続くのですが、適切な診察、検査を行っても身体的な病気や薬による影響では十分に説明できないものです。代表的なものとして、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、本態性高血圧、一部のアトピー性皮膚炎、緊張性頭痛・片頭痛などがあり、主に痛みを感じるものは、従来、疼痛性障害と呼ばれていました。
- 変換性/転換性障害
- 脱力や麻痺、筋肉の強い突っ張り、歩けない、などといった随意筋に関する症状や、皮膚の感覚がおかしい、見えない(一部しか見えない)、聞こえない(聞こえにくい)、といった感覚機能の症状が出るもので、他にも全身の筋肉がけいれんするてんかん発作のような症状や、意識を失ったかのような症状を呈する場合もあります。また声が出ない、ヒステリー球と呼ばれる、のどの中に何かの塊があるという感覚がみられることもあります。
原因はよくわかっていませんが、長期にわたってストレスにさらされた結果、引き起こされたストレス反応(交感神経系と呼ばれる自律神経や副腎皮質ホルモンなどのホルモン分泌が盛んに機能するようになり、心理面、行動面、身体面に起こる様々な反応)の影響により、無意識の葛藤や不安が、身体症状として現れるものではないかと考えられています。ストレスを受けやすい生活環境や行動、性格や考え方のクセなどによって発症するリスクが高く、特にストレス要因に対して言葉で表現できないような方が、身体的な表現として発症することがあると考えられています。
身体表現障害は、大人だけではなく、幼児の段階からも発症します。駆けっこが苦手なお子さんに運動会の当日お腹の痛みが出てくる、テストの当日になるとお腹を壊す、登校しようと制服を着て家を出ようとすると頭痛が出てくる、など症状の現れ方は多彩です。
身体表現障害の治療としては、まず、身体的原因が無いことを確定させることを前提に、お子さんと医師との信頼関係を築き、どんな時に症状が出たり悪化したりするのか、逆にどんな時に良くなるのかなどを明らかにして、症状が改善する方向へと導いていきます。お子さんの心が感じる痛みやつらさが、身体的な痛みや具合の悪さとして表れていると考えた方が良いことがあり、SOSとして対処を必要とします。
薬物治療としては、たとえば胃腸症状がみられる場合は、対症療法としての整腸剤などを用いる場合もあります。学校の先生やご家族など、周囲の方が症状の原因となっているストレスなどを理解して頂くことが重要です。お困りのことはお気軽に医師にご相談ください。