乳児期・幼児期

乳児期・幼児期のこころの発達

乳児期・幼児期のこころの発達

私たちのこころは脳の働きであると考えられますが、脳神経は妊娠のごく早期から形成され始め、最も遅くまで成熟します。最初は単純な管のような構造の神経管として発生し、神経細胞の増殖・遊走などにより複雑な折れ曲がりが出現し、誕生時には成人の脳とよく似た形態となります。神経細胞の増殖や神経細胞同士の接続を増やすだけでなく、一部の神経細胞があえて死滅するアポトーシスや、不必要な神経繊維を取り除くシナプス刈り込みも大事な役割を果たしています。

乳児は親や保護者に食事・睡眠・排泄・安全の確保など全面的に依存しますが、自分の世話をしてくれる人との間に情緒的な絆である愛着(アタッチメント)を築きます。乳児の感覚は発達途上ですが、親の顔や声を早い時期から識別します。愛着が深まると情緒が安定し、他人への信頼感が芽生えます。9ヶ月頃からは親が見ているものに乳児が注意を向ける、親に見てほしいものに目を向けるよう指さす・視線で促すといった、乳児と親以外のものを介在したコミュニケーションの共同注意がみられるようになります。共同注意は他者の視点や心を理解する、こころの理論の基礎となります。

このような乳児期のこころの発達を足掛かりとして、その後のライフステージにおける人間関係を発展させ、ストレスなどの環境変化へ柔軟に適応する力であるレジリエンスを獲得していきます。その一方で乳児期に十分な愛情・保護を受けられなかったお子さんは、他者への信頼を持てないため安定した対人関係を築きづらく、自己肯定感が得られず情動が不安定になることが多いことがわかっています。乳児期は誕生から死へといたる人生の中で、最も急激な神経発達を遂げる時期であり、その重要性が明らかになったばかりです。

幼児期には、まず自分で移動できるようになります。周囲の環境に自分で手を触れ、働きかけられることが新鮮で、棚やタンスなど高いところによじ登り、引き出しを開け、容器に入った液体をこぼしたりします。こういった「いたずら」に保護者は驚き困惑しますが、これらの探索行動は幼児が周囲の世界への理解を深める基盤となります。

乳児期には食事、排泄、睡眠、衣服の着脱などすべてにわたって親の世話を受けていましたが、幼児期に入ると少しずつ自分でできるようになり、食事や睡眠などの生活リズムが定着します。二語文が話し、「おやつ、ほしい」などと意思表示ができるようになります。急速に語彙が拡大し、それまで親からお子さんへ一方的だったやりとりが、双方向的なものへ変化します。自己主張が増え、なんでも「自分でやる!」と主張し、親や保護者の言うことに耳を貸さなかったり、口答えしたりすることもあります。この時期は「いやいや期」とも言われ、自我が芽生えを示しています。また目の前にないものを心の中に思い描き、たとえば積み木を電車として走らせる、バナナをおにぎりとして食べる真似をする、などの見立てができるようになります。言葉で考える能力も芽生えます。

多くの子が幼児期までに、幼稚園や保育園で家庭外での集団生活を経験し始めます。3-4歳頃は、同年齢の子が同じ場所にいても、めいめい好き勝手に遊ぶだけで、やりとりをしながら一緒に遊ぶ関係は成立しづらく、並行遊びと呼ばれます。5-6歳になると、お母さん役・赤ちゃん役などと役割分担してままごとをしたり、ルールに則った遊びをしたりできるようになります。

集団生活が始まる幼児期には、その子の個性・特性が明確になります。まだまだ対人スキルが未熟なため、幼稚園・保育園ではおもちゃの貸し借りも上手にできず、他の子とよくケンカをします。たたき合いになることも頻繁です。いったん遊びに夢中になると、次の行動に移れず、無理に引き離そうとすると、癇癪を起こしたように泣き出してしまうこともあります。静かにして欲しいところで騒いだり走り回ったりして大人が困ることもあります。またお子さんによって成長の仕方も様々で、小学校に入る前に前述の全てができるようになっているとは限りません。こういった行動・特性の多くは心配の要らないものですが、発達障害として療育などの対応が必要な子もいます。

こうした幼児期の気がかりな行動について、これまでの豊富な診療経験に基づき相談にあたらせて頂いております。お子さんお子さんについての様々な不安や、お子さん自身が何か不安を感じているような場合、当院にご相談ください。(保護者の方の子育てに関するアドバイス等も行っています。)

お子さんに以下のようなご様子が見られる場合、お気軽にご相談ください。

  • 落ち着きが無く、じっとしていられない
  • 自分の順番がくるまで待てない
  • 体が勝手に動いてしまう
  • 周囲が気になって遊びや勉強に集中できない
  • なくし物が多い
  • 注意しても同じことを繰り返す
  • 得意なことには集中するが苦手なことはすぐにあきらめる
  • 喋り方に不自然なところがある
  • 独特のこだわりがある
  • 集団になじめず、輪の中に入っていけない
  • 音や光などに過敏である
院長
江里口 陽介
診療内容
児童思春期精神科・精神科・心療内科
住所
〒158-0097
東京都世田谷区用賀4-3-9 MORIYA THREE 2F
アクセス
東急田園都市線「用賀駅」より徒歩1分
03-3708-2500
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:土曜日は14:00~17:00まで
診療時間 日祝
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