中学生・高校生のこころの発達
思春期青年期と呼ばれる段階で、中学生が前期、高校生が中期となります。二次性徴の始まりとともに男女の身体的・精神的な差異が顕著になります。身体的に大きな変化が生じるため、自分自身に対する意識が、嫌でも過剰となります。それまではあまり異性に対する意識というのは高くなかったのが、この時期に高まり、距離を置きながら見つめ直すようになります。
幼いうちには、周囲の両親や学校の先生に言われた評価を、そのまま自分の中に取り入れてきたのが、徐々に自分自身の視点から見つめ直すようになります。客観的に自分自身を把握するために、他者との比較を行います。この時期には、特に他者よりも劣っている自分自身の側面を、客観的に把握するようになり、自己評価が低下しがちです。社会的視点取得といって、他者の目を通して自分自身を見ることができるようにもなります。こういう風に見られたいという願望や理想の自己が確立しますが、理想の自分と現実の自分とのギャップに苦しむ時期でもあります。
また将来的な自立を見据えて、自分らしさ(アイデンティティ)を求めて様々の模索を始めます。アイデンティティという言葉は、私は他の誰とも違う自分自身で、私は一人しかいないという感覚と、今までの私はずっと私自身であり、今の私もこれからの私もずっと私であり続ける感覚を持った主体的な自分をさします。自分自身の職業は生き方、信念などについて、これが自分だという感覚を持ち、それが社会的にも認められていると自分自身で思えることです。アイデンティティの模索を通した成長は、思春期前期から始まります。友人関係だとか恋愛だとか職業選択などを通じて確立していきます。
思春期・青年期には、人生の中でも最も感情の波が大きくなり、またリスクの高い行動をとりがちであると考えられています。生物学的な観点からは、他の部位に比べて脳の前頭前野の成熟が発達途上であり、相対的に辺縁系の活動が亢進していること、などからリスク志向が高まるとも言われています。危険な遊びや飲酒・喫煙・ドラッグなどへの興味を持つことがありますし、SNSを使って仲間内で不適切な行動を自慢しあったりすることもあります。またはっきりとした自殺願望が出現したり、リストカットなどの自傷行為が始まったりすることもあります。
思春期・青年期になると行動力も出てくるため、学童期までに比べると、問題が大きくなりがちです。また統合失調症・双極性障害・うつ病・不安障害など、多くの精神疾患は思春期・青年期が好発年齢です。
当院では、これまでの豊富な診療経験に基づき、思春期心性と個別性を尊重したうえで、悩みや不安の改善法を提案していきます。必要なときには学校の先生とも連携し、治療にあたっていきます。また本当につらい時は、お薬で気持ちを鎮めるということもあります。一緒に問題を解決する方法を見つけていきましょう。